
結婚や転勤、引っ越しのたびに「本籍地」を移す方がいらっしゃいます。実はこの「転籍」、繰り返すほど、将来ご家族が相続の手続きで苦労する原因になることをご存じでしょうか。今回は、転籍を繰り返している方に知っておいていただきたいポイントをまとめました。
🏠 転籍とは?
転籍とは、本籍地(戸籍が置かれている場所)を別の市区町村に移すことです。住所の引っ越しとは違い、必ずしも実際に住んでいる場所と一致させる必要はなく、思い入れのある土地や、実家、結婚を機に配偶者の本籍地に合わせるなど、さまざまな理由で行われます。
転籍そのものは手続きも簡単で、届け出れば誰でも自由に行えます。しかし、この手軽さが、後々の相続手続きでは負担になってしまうのです。
⚠️ なぜ転籍を繰り返すと相続で困るのか
転籍をすると、新しい本籍地に新しい戸籍が作られ、それまでの戸籍は「除籍」として閉じられます。相続手続きでは、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を、途切れなくすべて集める必要があります。
- ⚠️ 転籍のたびに、その時点の本籍地から除籍謄本を取り寄せる必要がある
- ⚠️ 転籍を5回繰り返していれば、5か所以上の役所とやり取りすることになる
- ⚠️ 一つでも本籍地を取りこぼすと、相続人の確定ができない
つまり、転籍の回数がそのまま、相続手続きで集めなければならない戸籍の数と、やり取りする役所の数に直結してしまうのです。
📍 「広域交付制度」があっても油断できない理由
2024年3月に始まった「広域交付制度」により、本人・配偶者・直系尊属・直系卑属であれば、最寄りの窓口で全国の戸籍をまとめて請求できるようになりました。転籍を繰り返していても、これで一気に解決すると思われるかもしれませんが、実はいくつか注意点があります。
- ✅ 電子化されていない古い戸籍は対象外のため、昔の転籍先が小規模な自治体だと取得できないことがある
- ✅ 請求できるのは窓口に行ける本人(直系の相続人)のみで、兄弟姉妹や、行政書士などによる代理請求では利用できない
- ✅ そもそも「どこへ転籍したか」を家族が把握していないと、請求のしようがない
制度が便利になった分、逆に「取れるはずなのに取り方を間違えて時間がかかってしまう」というケースも起こりやすくなっています。
🔎 こんな方は特に注意が必要です
- 結婚・離婚のたびに本籍地を変えてきた方
- 転勤や引っ越しの多い人生を送ってきた方
- ご高齢の親御さんが、若い頃に何度も本籍地を移していた方
- 本籍地を実家のまま変えていないつもりでも、親や祖父母の代で転籍歴がある方
💡 今からできる備え
一番の備えは、ご自身やご両親の本籍地の履歴を、元気なうちに一度確認しておくことです。「これまでどこに本籍地を置いていたか」が分かっているだけで、いざという時にご家族が慌てずに済みます。
すでに転籍歴が複雑になっている場合や、ご自身での確認が難しい場合は、専門家に本籍地の履歴調査や戸籍収集を依頼することもできます。
まとめ
転籍そのものは自由にできる手続きですが、繰り返すほど、将来の相続手続きで集めるべき戸籍の数が増え、ご家族の負担も大きくなります。広域交付制度ができた今も、電子化されていない戸籍や、直系以外の請求には制約が残っているため、油断は禁物です。
ご自身やご家族の本籍地の履歴、戸籍収集でお困りの際は、お気軽にご相談ください。