
「相続の手続きを始めたいけれど、まず何から手をつければいいの?」
そんなご相談をいただいたとき、最初にお伝えするのが「戸籍謄本を集めること」です。相続手続きは、この戸籍集めから始まると言っても過言ではありません。今回は、戸籍謄本をどこで、何通取ればいいのか、分かりやすく整理してみます。
🔍 なぜ戸籍謄本が必要なの?
相続の手続きでは、「誰が相続人であるか」を公的に証明しなければなりません。銀行の預金解約や不動産の名義変更など、どの手続きでも必ず求められるのが、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本です。
なぜ「出生から死亡まで」なのかというと、把握していない子どもや、離婚歴・認知した子どもなど、家族が知らない相続人がいないかを確認するためです。実際、戸籍を遡って調べていくと、思いがけない事実が見つかることも少なくありません。
📋 何を集めればいいの?
必要になる戸籍は、主に次の3種類です。
- ✅ 戸籍謄本(現在の戸籍):亡くなった時点で入っていた戸籍
- ✅ 除籍謄本:結婚や転籍などで、それ以前に入っていた戸籍
- ✅ 改製原戸籍:法改正によって戸籍の様式が変わる前の、古い戸籍
多くの場合、1通だけでは足りません。結婚や本籍地の変更を何度もされている方だと、出生までさかのぼるのに5通、6通と必要になることもあります。
📍 どこで取れるの?「広域交付制度」で少し便利になりました
以前は、戸籍は「本籍地」の市区町村役場でしか取得できませんでした。しかし2024年3月から「広域交付制度」が始まり、本人・配偶者・直系尊属(父母・祖父母など)・直系卑属(子・孫など)であれば、最寄りの市区町村窓口で全国の戸籍をまとめて請求できるようになりました。
ただし、この制度には見落とされがちな制約があります。
- ⚠️ 兄弟姉妹や甥姪など、傍系の親族の戸籍は対象外です
- ⚠️ 窓口での本人請求のみで、郵送請求や代理人請求はできません
- ⚠️ 行政書士などの専門家による代理請求(職務上請求)も利用できません
- ⚠️ 戸籍の附票や、電子化されていない古い戸籍も対象外です
つまり「誰でもどこでも簡単に」というわけではなく、実際に窓口へ行けるのは請求者ご本人だけ、という点が大きなポイントです。
📮 こんな場合は、これまで通り本籍地への請求が必要です
- ・兄弟姉妹や甥姪の戸籍が必要な場合
- ・ご本人が平日に役所へ行く時間が取れない場合
- ・専門家に戸籍収集を代行してほしい場合
このようなケースでは、従来どおり本籍地の役所へ郵送で請求することになります。請求書の書き方や必要書類、手数料の納め方(定額小為替を使います)に少しコツがあり、不備があると返送されて手続きが遅れてしまうこともあります。
⚡ つまずきやすいポイント
- 本籍地が何度も変わっていて、追跡が大変
- 古い戸籍は手書きの毛筆文字で、読み解くのが難しい
- 郵送請求の書式や手数料の計算を間違えて、やり取りが何往復も発生する
- 相続人の中に音信不通の方や、面識のない異母(異父)兄弟がいることが分かる
- 広域交付が使えるケースか、本籍地請求が必要なケースかの見極めが難しい
こうした戸籍集めは、時間も手間もかかる作業です。制度が便利になった今も、平日に役所へ行く時間が取れない方や、兄弟姉妹の戸籍が必要な方、遠方の本籍地とのやり取りが負担な方は、専門家に依頼することで、手続きがぐっとスムーズになります。
📑 集めた戸籍は「法定相続情報一覧図」にまとめておくと便利
戸籍を全て集め終えたら、法務局で「法定相続情報一覧図」を作成してもらうことをおすすめします。これは、亡くなった方と相続人の関係を家系図のような一枚の図にまとめた証明書で、法務局が内容を確認したうえで発行してくれます。
一度この一覧図を作っておくと、以降の相続手続き(不動産の名義変更、預貯金の解約、株式の名義変更など)では、分厚い戸籍の束を何度も提出する代わりに、この一覧図一枚を提出するだけで済むようになります。複数の金融機関や役所で並行して手続きを進めたい場合にも、必要な通数を無料で発行してもらえるので、とても重宝します。
作成には、集めた戸籍一式に加えて、一覧図(家系図)を自分で作成して法務局に申出をする必要があります。この申出書の作成や戸籍との照合も、行政書士に依頼できる部分です。
まとめ
相続手続きの第一歩は、亡くなった方の戸籍を「出生から死亡まで」もれなく集めることです。2024年の広域交付制度で以前より便利になった部分もありますが、対象になるかどうかの見極めや、対象外のケースでの本籍地請求は、今も変わらず手間のかかる作業です。
戸籍の収集や相続人調査でお困りの際は、お気軽にご相談ください。